顎関節症に漢方

『漢方の臨床』投稿記事です。

漢方を併用して奏功しましたのでご報告致します。

顎関節症は歯科の疾患の中で最近急増しています。顎(あご)の関節を中心としてその周囲に起こる障害の総称です。口を大きく開けようとしても、こわばって開かなかったり、口の開閉時にカクンと音がしたり、関節や筋肉が痛むといった症状が継続する場合に顎関節症といいます。症状は多岐にわたります。

①筋肉の痛み、こり:顎の周辺、こめかみ、首すじの痛み、肩こり。

②関節の痛み:顎関節部や耳の穴の内前方あたりの痛み。

③顎の動きの制限:顎を動かしにくい、大きく開けられない、物がよく噛めない、どこで噛めばいいのかわからない。

④関節の異常音:顎を動かした時にカクンあるいはギシギシ、ミシミシ音が聞こえる。

⑤その他の症状:上記の症状に伴って、さらに頭痛、耳鳴り、手足のしびれ、めまい、鼻やのどの違和感。

(ヤフーヘルスケアより)

 

【症例1】57歳 女

【主訴】かみあわせが悪い、口が開かない

【既往歴】特になし

【現病歴】半年前に歯に冠を被せて以来、かみ合わせが悪くうまくかめない。口も開きにくく、肩こりもひどく辛い。目が充血している。イライラする。

【経過】

(初回)半年前に臼歯部に新しい冠を入れてから、かみ合わせが悪くなり口が開きにくくなった。何度かかみ合わせの調整をしたが、なかなかよくならないという状態で拝見しました。

気診をすると全体に冷えてかみしめて身体が緊張していました。

水毒++ 瘀血+++

まずはかみしめていることを自覚して頂き、上下の歯があたっていることで身体が緊張してしまうことをご理解頂きます。それは簡単な方法でわかります。まずはかみしめた状態で、腕の筋肉を押してみます。次に安静位にして同じ所を押してみると、圧痛も違いますし、押す指の入り方も違います。

そうして、まず安静位に顎を誘導します。安静位を身体に覚えてもらうため、何度か練習をしていきます。顎マッサージや鎖骨下マッサージ、ソケイ部マッサージ、深呼吸を1日最低2回各10回ずつ行って頂きます。

次に漢方を決めていきます。身体のまわりの気の異常(風邪ーふうじゃ)があるのでそれを取る漢方は桂麻各半湯でした。毎日朝1つまみなめて頂きます。

気血水を診ると、瘀血の反応が一番強かったので、合わせてみると桂枝茯苓丸でした。夜お湯に溶かして、ツムラエキス剤1/2包(約1.25g)飲んで頂きました。

最後にかみ合わせの調整(咬合調整)を行いました。

(2回目~5回目)

月に2回位のペースで咬合調整と養生指導を続けました。

少し軽くなってきたとのこと。かみしめていることに気付いたので、その時にすぐ口を開くようにした。漢方処方は同様でした。

2か月後になりますと、口もだいぶ開けれらるようになり、肩こりも改善傾向。かみ合わせはまだしっくりとはいかないが、以前よりはずっと良くなった。

漢方も同様で続ける。

3か月後、左側がやや高いということで、少し調整し、顎を右に移動した。漢方は桂枝茯苓丸のみとなり、量を1日1回夜1/3包(約0.8g)とした。

瘀血の反応は減ってきて、肩こり、イライラ、目の充血もなくなっていました。

4か月目、かみ合わせもほぼ安定し普通に噛めるようになった。

かみ合わせの調整でよくなるものと思っていたが、かみしめないようにしなければよくならないことがわかってよかったとご本人の弁。症状がなくなったので廃薬。

 

【考察】

顎関節症の治療は一般的に安静にし、鎮痛薬の投薬、強くあたるところがあれば咬合調整、スプリントといって、上か下の歯全体を透明なプラスチックのかぶせもので覆って、噛み合わせをがらりと変えて、何カ月か様子をみることがよく行われます。スプリントを入れていると、噛みこんだ時に、関節に強い力がかからなくなり、関節や周囲の筋肉が安静状態になります。病状の初期の場合にはかなりの治癒率を示します。さらに重症の場合は筋肉に麻酔薬を注射したり、関節内の炎症性滲出液を除いたりする外科的療法を行うこともあります。

今回は身体をリラックスさせる養生法と、駆瘀血薬の漢方で改善しました。なぜ口が開きにくくなるのかということが、顎関節のみの問題と捉えずに、身体が冷えて全身の筋肉が緊張し、そのためにかみしめてしまい、顎関節症になっていると私は考えています。ですから顎先マッサージなどで身体の緊張をほぐし、身体を芯から温め、身体がリラックスさせることによって、症状が改善したと思われます。

桂麻各半湯は長引いた太陽病、肌肉に鬱した熱を解すとあります。ほんの少しの量で表面の緊張が取れるのではないかと思われます。

そして桂枝茯苓丸の桃仁・牡丹皮は瘀血を取り、桂枝・茯苓が裏気の衝逆を和し水気の逆行を下行するということなので、上の方に上がった水がおりるのではないかと思われます。桃仁・芍薬・牡丹皮・桂枝は血流をよくする、血行を促進するとのこと、顎安節周辺の血流もよくなれば筋肉も弛んで症状は改善するものと思われます。

歯科領域でも漢方が併用されることによって症状の改善が早くなるものと考えられます。